新時代の香港映画の幕開けを予感させる、新人監督たちによる低予算&ノースター映画!
香港で極秘裏に制作され、台湾アカデミー賞(金馬奨)を席捲した話題作!!
2019年の香港の民主化デモに参加した若者たちが、自殺しようとする少女を救うため、民間捜索隊を結成して香港を駆け巡る姿を描いた『少年たちの時代革命』。極秘裏に制作された本作は、台湾アカデミー賞の最優秀新人監督部門、最優秀編集部門にノミネートされ、金馬国際映画祭アジア最優秀映画賞を受賞し、香港映画界に彗星のごとく現れ、大きな衝撃を与えた。日本では2022年6月に2日間限定緊急上映会がユーロライブで開催され、チケットが即日完売となったことは記憶に新しい。
デビュー作で世界に注目される監督となったのは、レックス・レン(任俠)監督とラム・サム(林森)監督だ。香港の民主化デモでは、若者による抗議の自殺が相次いだ。レックス監督とラム監督は、デモに参加する若者や市民の中でも、自殺志願者を救うために結成された民間捜索隊の姿を描こうと、本作を制作した。
起用した多くの俳優は、演技経験のない新人で、時にはデモ現場で監督自らがスカウトもした。孤独を抱え、香港の街をさまよう主人公YYはじめ、演技未経験のとは思えない生き生きとした表情を見せる俳優陣も注目だ。コロナ禍のデモ現場でのゲリラ撮影など、ドキュメンタリータッチな疾走感は、香港の街の熱気をリアルに映し出している。こうした制作スタイルは、レックス監督が師事したフルーツ・チャン監督の『メイド・イン・ホンコン/香港製造』を彷彿とさせる。
少女を救い出すために、仲間たちと香港の街を駆け抜けろ!
いまの香港を生きるリアルな若者たちの、疾走感あふれる青春群像劇が誕生。
主人公YYは親友と一緒にゲームセンターで遊び、デモにも参加する、いまどきの香港の若者だ。親友が香港を離れることを知り、孤独と絶望を抱えたYYは、18歳の誕生日にSNSにメッセージを残す。YYが自殺しようとしていることを知った少年ナムは、仲間たちと共に民間捜索隊を結成し、香港の街で大捜索がはじまる。仲間の命を救いたいという一途な思い、デモでは何も変えられないという焦燥感。やがて仲間たちの中で、不協和音が生じていく。
友情、恋愛、仲間割れ、出会い、家族…。岐路に立たされた2019年の香港で、若者たちは何を見つけ出すのか─。
「この映画には“自由”に対するリトマス試験紙」─レックス・レン監督
2019年6月からはじまった香港民主化デモは、新型コロナウイルス感染症の流行、2020年7月の香港国家安全維持法施行により、封じ込められてしまった。中国当局の締め付けで自由が失われつつある香港では、映画への検閲、規制も厳しくなり、香港の言論と表現の自由が一段と狭まってきている。しかし香港で上映禁止となった作品は、皮肉にも海外映画祭で上映され、大きな話題となっている。
2021年カンヌ国際映画祭、フィルメックスにてサプライズ上映された『時代革命』(監督:キウィ・チョウ)、山形国際ドキュメンタリー映画祭で最高賞となるロバート&フランシス・フラハティ賞を受賞した『理大囲城』(監督:香港ドキュメンタリー映画工作者)など、香港民主化デモを描いたドキュメンタリー映画が国際的に注目を集めた。そうした中、フィクション映画では、『少年たちの時代革命』が台湾アカデミー賞を席捲したのを皮切りに、台湾で劇場公開された。
表現の自由を制限された香港映画界だが、新時代の旗手たちの映画は、確実に世界を魅了していっている。
2019年、香港の街はデモに参加する若者があふれていた。少女YYは、親友のジーユーとゲームセンターで遊び、時にデモに参加する普通の17歳だ。父親は中国で働き、母親は再婚相手とイギリスに渡った。デモに参加して逮捕されたYYとジーユー。「香港は変わらない」と、ジーユーはYYに香港を去ることを告げる。孤独と絶望を抱えたYYは、18歳の誕生日にSNSにメッセージを残し、ひとり香港の街に消える─。
少年ナムは、SNSでYYのメッセージを見つけ、YYを助け出そうとする。恋人のベル、デモ仲間のルイス、バーニズム、そしてソーシャルワーカーのバウ、ドライバーのファイ兄妹、“セーラームーンライダー”兄貴たちも加わり、捜索隊が結成される。助け合いながらも、時にぶつかり合い、YYを探して香港の街を駆け巡る捜索隊たち。
「香港も、YYも救えない─」
それぞれの思いを胸に、YYを探し出そうとするが、誰もYYを見つけ出せないまま、時間だけが過ぎてゆく。
夜が深まり、屋上からひとり香港の街を見下ろしているYYの姿があった─。
YY/ユー・ジーウィン(余子穎)
18歳、穏健派。父親は中国で働き、母親は再婚相手とイギリスで暮らしている。18歳の誕生日にSNSにメッセージを残して、命を絶とうとする。
ジーユー/レイ・プイイー(李珮怡)
18歳、穏健派。YYの親友。逮捕されたことを機に、香港を去る決断をする。
ナム/スン・クワントー(孫君陶)
20歳、勇武派。大学受験に失敗し、建築作業員をしている。YYとジーユーと同じデモ現場で、逮捕された。
ベル/マヤ・ツァン(曾睿彤)
21歳、後方支援。香港中文大学学生で、ナムの恋人。家族はイギリスに移住する予定。
ルイス/トン・カーファイ(唐嘉輝)
18歳、勇武派。親中派の父親からは、デモに参加することを反対されている。ナムを兄貴分として慕っている。
バウ/アイビー・パン(彭珮嵐)
38歳、ソーシャルワーカー。
バーニズム/ホー・ワイワー(何煒華)
15歳、偵察。警察官の父親に反感を持っている。両親には友達の家でゲームをすると偽って、デモに参加している。
ファイ&ゾーイ兄妹/スン・ツェン(孫澄)・ マック・ウィンサム(麥穎森)
35歳、ドライバーの兄と、24歳、後方支援の妹。母親が鬱病で投身自殺している。
レックス・レン(任俠 Rex REN)/監督
1982年生まれ。香港演芸学院電影電視学院演出学科卒業。フルーツ・チャン監督に師事し、脚本、助監督として携わる。2017年、短編映画『螻蟻』が、第11回Fresh Wave International Short Film Festival最優秀監督賞、第23回香港インディペンデント・ショートフィルム&ビデオ・アワードで最優秀賞を受賞。2018年、『紙皮婆婆』が金馬創投會議(企画マーケット)グランプリ受賞した。『少年たちの時代革命』では警官役で出演もしている。
コメント
『少年たちの時代革命』の上映が世界一周して、やっと谷崎潤一郎の「少年」と大島渚の『少年』の国、日本にたどり着いた。なぜ「少年」が絶えず、どんな時代でも創作の原動力になり得るのか?香港からやって来た「少年」が、大きな人生の波を乗り越えても少年の心を持ち続けるあなたに、2019年の香港のエネルギーを届けてくれるだろう。たとえ結果が出なくても、私たちは諦めない。
ラム・サム(林森 LAM Sum)/監督
1985年生まれ。香港演芸学院電影電視学院演出学科卒業。長編映画とドキュメンタリー映画の両方で活躍している。代表作に『暉仔』(2011)、ドラマ作品『豹』(2015)、『黑哥』(2017)などがある。現在は香港舞台芸術学院などで講師も務めている。
コメント
映画『少年たちの時代革命』を発表してからおよそ1年経った。今でも香港では上映禁止だが、台湾、ヨーロッパ、オーストラリアなどで上映されてきた。そして今回、日本で劇場公開が決まったことは、この映画に関わってきたチーム、いまなお悲観的な状況に置かれている香港人にとって、大きな励みになるに違いない。2019年に民主化デモが始まってから、日本人はいつも香港に関心を寄せてくれた。3年後の今日、『少年たちの時代革命』の劇場公開によって、再び日本、さらに世界中の自由を愛する人々と繋がり、力を分かち合うことができたら幸いです。ありがとうございます!
アジア屈指の名門校・香港理工大学が警察に封鎖され、要塞と化した緊迫の13日間。 至近距離のカメラが捉えた、衝撃の籠城戦の記録!
香港理工大学包囲事件は、2019年の香港民主化デモの中でもスキャンダラスな事件だったが、いまだその全容はあきらかになっていない。圧倒的な武力を持つ警察により包囲された構内には、中高生を含むデモ参加者と学生が取り残され、逃亡犯条例改正反対デモで最多となる、1377名の逮捕者をだした。 警察の包囲網により、大学は完全に封鎖され、救援物資を運ぶことも、記者や救護班が入ることも許されなかった。しかし匿名の監督「香港ドキュメンタリー映画工作者」たちは、デモ参加者として大学構内でカメラをまわし続けた。警察による装甲車、放水、催涙弾の攻撃に、デモ隊は弓矢、火炎瓶で応戦し、平和なキャンパスは炎に包まれた。大音量の音楽で対抗し、スラングで罵倒しあう警察とデモ隊、助け合いながらも裏切り者がいるのではないかと疑心暗鬼になり対立するデモ隊たち。カメラは追い詰められたキャンパスの中の混乱を記録し続けていく。
武器を持ち戦い続けるか、命がけで脱出するか──
戦場と化した大学構内で、究極の選択を迫られていく!
理大構内に残されたデモ隊は、安全に脱出することを望んだが、警察は一歩も譲らず兵糧攻めを決行し、膠着状態が続いた。逮捕されれば暴動罪で懲役10年となる可能性もある中、デモ隊は「最後まで戦うか、脱出するのか」という究極の選択を迫られていく。仲間を残して自分だけが助かるのか、戦おうとする自分たちを仲間は裏切り見捨てるのか…。
「本当は怖くて仕方ない。」
キャンパスに留まっても、圧倒的な武力を持つ警察に潰される恐怖、脱出しても逮捕されるかもしれない恐怖。リーダー不在の運動は、ひとりひとりの決断によってのみ全てが決定されていくが、やがてそれはデモ隊の心をかき乱していくことになる。
四面楚歌のキャンパスの中の人間模様は、まさに社会の縮図だ。圧倒的な武力で封じ込めようとする警察を前に、なすすべもないデモ隊の姿は、まるで香港が置かれている状況に重なっていく…。
これは大学を舞台にした、悪夢の“密室劇”なのか──
監督全員匿名、出演者の表情はモザイク処理、香港では上映禁止!
香港映画の歴史に名を刻む、ドキュメンタリー映画が世界初劇場公開!!
『理大囲城』は、香港映画評論学会27年の歴史でドキュメンタリー映画として史上初の最優秀秀映画賞を受賞する快挙を成し遂げた。受賞記念上映会のチケットを求め観客が殺到したが、「暴徒礼賛映画」のレッテルを貼られ、上映会は中止に追い込まれた。その後、香港では上映禁止になるも、2021年台湾国際ドキュメンタリー映画祭(台湾国際記録片影展)のオープニング作品として上映され、山形国際ドキュメンタリー映画祭では、香港映画として初の最高賞ロバート&フランシス・フラハティ賞を受賞し、大きな話題となった。
なお、本作の監督及び製作者は、将来のキャリアと身の安全を考慮して、全員匿名となっている。出演者も逮捕の危険性から、防護マスクや、モザイク処理で、その表情は画面には映し出されない。しかし外部からの視点を一切排除し、閉じ込められた人々の視点で語られていく映像は、生々しいまでの息遣いと心情を映し出し、見えないはずの表情を浮かびあがらせていく。
2020年、香港国家安全維持法が施行され、香港では映画の検閲が強まっている。しかし『理大囲城』を起爆剤として、皮肉にも新時代の香港映画は世界を席捲しはじめている。2021年カンヌ国際映画祭、フィルメックスにて『時代革命』(監督:キウィ・チョウ)が サプライズ上映され、台湾アカデミー賞(金馬奨)では極秘裏に制作された『少年たちの時代革命』(監督:レックス・レン、ラム・サム)が上映され、大きな話題となった。香港映画人たちの不屈の精神は、香港映画に新しいムーブメントを生み出し、世界を熱狂させているのだ。
香港ドキュメンタリー映画工作者
(香港紀錄片工作者)
主な作品に、逃亡犯条例改正反対デモを追ったドキュメンタリー映画『理大囲城』、『立法会占拠』(原題:佔領立法會)等。『立法会占拠』は、2019年7月1日に起きた、デモ隊による立法会占拠を追った短編ドキュメンタリー映画で、台湾アカデミー賞ドキュメンタリー映画賞にノミネートされた。
複数名によって構成されているが、身の安全を考慮して全員匿名としている。
コメント
映画『理大囲城』が劇場公開されることは、我々にとって大変意義があることです。自由への切望が、我々を繋ぎ合わせることができると期待してやみません。『理大囲城』を観て下さる全ての人に、深く感謝致します。
行定勲/映画監督
この映画は、抵抗と戦いの果てに在る、わずかな希望を見出している。
雨傘をさした若者たちの慟哭が、香港映画の復活の原動力となるに違いない。
岩井圭也(作家/「水よ踊れ」著者)
勇敢に立ち向かい、絶叫することだけが革命ではない。
たった一人の命を救うために奔走することもまた、時代を変える革命だ。
石坂健治/東京国際映画祭シニア・プログラマー/日本映画大学教授
少年少女たちの疾走と絶望と連帯。街頭闘争のドキュメントの生々しさ。この映画を撮らなくては、この映像を残さなくては、という真剣な息づかいが聞こえる。この切迫感にはどこかで出会った。返還の年に公開されたフルーツ・チャンの『メイド・イン・ホンコン』。香港の未来を担うはずの若者が返還を前に次々と命を落としていった、あの反骨の予言的なフィルムから四半世紀。本作の製作陣にはフルーツの薫陶を受けた者もいるという。さもありなん。魂はしっかりと継承されている。ここに安易な希望の描写はないが、かわりに連帯の予兆がある。勇気あるスタッフ・キャストの安全を祈らずにはいられない。
安彦良和/漫画家
この映画は、抵抗と戦いの果てに在る、わずかな希望を見出している。
世界最大、最強の権力と対峙する若者達。彼等は非力で、まとまりがなく、弱気だ。
しかし絆を求め、会話し合い、常に呼びかける。だから感動する。共感を覚える。
四方田犬彦/比較文学者・映画史家
かつて大島 渚は、敗者は映像を持っていないと言った。第二次世界大戦、68年の学生運動も内側から撮った映像はない。
『理大囲城』は香港において内側から映像を記録した。これは偉大なことであり、敗者ではないということを示している。
柳下毅一郎/映画評論家
限りなき自由都市香港のイメージは香港映画とHKpopの記憶と切り離せない。だから香港歌謡が武器として使われてしまう場面に涙し、香港アクションをも彷彿とさせるアクロバティックな脱出劇に興奮する。このドキュメンタリーがどうしようもなく香港映画であることに、驚き感動するのである。
大島新/ドキュメンタリー監督
なぜこんなにも悲痛なドキュメンタリーが作られなければならないのか。
「死は覚悟したが人知れず死ぬのは嫌だ」
そう言いながら抵抗を続けた若者がいたことを、記録として残すためだ。
だから目を背けるわけにはいかない。
そして記憶しなければならない。あの若者たちのことを。
伊藤俊也/映画監督
中国政府の圧政に鎮静化させられた香港の現状を思う時、「理大囲城」ほど痛切に胸を打つ作品はないだろう。
ここには民主化運動の挫折の予兆が実に生々しく露わにされているのだ。